
愛して、愛されて。
第6章 狂気の陰
「…はぁ、」
考えるのも馬鹿らしくなって、俺は今だ寝ている恭の元に歩み寄った。
机にだらし無くほうり出されている開かれてすらない教科書。
――なんで俺だけバレてんだよ。恭の方が酷い眠り方なのに。
ふと、そんな疑問が頭を過ぎったが、たまたまだと笑う。
そして、
―――バシッ。
「…ってぇ!?」
いつまでも夢の中の恭の頭に、教科書を振り落とした。
バッと目を覚ました恭は、信じられないという顔で俺を見る。
その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「…有り得ない。おま、教科書の角!!」
「はっ、寝てるお前が悪いんだよ。起きろー、帰んぞバカヤロー。」
「でもさ、角はねーよ。奏太くん…」
「うるさい奴。」
不満ありげな恭に、ふふんっと笑い
スタスタと自分の席へ戻った。
「じゃーな、村尾。」
「おー、ばい!」
俺に手を振るクラスメイトに手を振り返し、教科書を鞄に突っ込む。
少しだけ置き勉をして、また恭の側へ寄った。
「うー…いてぇよー…」
今だ唸る恭を無視して、鞄を肩にかけ直した。
そのままドアに向かおうとした瞬間、ポケットの中で震える携帯。
驚いた。
俺の携帯が鳴るなんて、珍しいことで。
しかも、俺のアドレスなんて、兄さんと恭にしか教えてないから。
「・・・・」
恭なわけがないから、
きっと、兄さんからだろう。
