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美人妻は性欲旺盛っ!

第20章 回想





「初めて会った時

俺は手当てされた事より

叱られた事に驚いたよ

初対面の俺を
心の底から叱って
心配してくれる女の子を見て
いいなって思った」





 え――と思った
 その時には涙はもう止まっていた

 先輩は声を落として、低めの声で静かに私に聞かせる





「本当に
いいなって思った

真剣に俺を心配して
怒ってくれる子は
生まれて初めてだった

俺は人よりずっと
器用で、優秀で、苦労知らずで
家でも学校でも
なんでかな
叱られた事がないのにな

まだ毛も生え揃ってなさそうなガキに叱られてやんの」





 ――――っ……





「俺は自分が思ってるより
大したことないなって思った

なんてことはない
俺がいる場所も
必死に包帯を巻く
アソコがツルツルの女も

おんなじ場所にしかいない
ここにしかいない

そう思ったら
信じられねぇんだよ
地に足がついた感じだった

すげーと思ったよ
人を、簡単に叩き落として
無自覚で
でも悪くなかった
人と同じ高さってのは悪くない
この女と同じ高さかって
悪くない気分だった」





 私は困惑していた

 あれだけ私の前で優しい先輩を演じていた先輩が…自分をさらしてる





「二度目にいいなって
すげーなって思ったのは

うちは貧乏だから
だから私がうんと勉強して
就職して働いて
五歳下の弟を
大学に行かせてやるんだって
寝言ほざいた時だよ」





 先輩の声が
 耳にするりと入って
 私の中をおかしくさせる

 一度止まった涙が
 また流れそうだった





「泣くなよ
なんで泣くんだよ

お前は自分が思ってるより
ずっといい女だ

自信持てよ
お前はすごいんだよ
立派で、すげーいい女だ

だからもう泣きやめ
笑っとけ、お前

あと…
彼氏殴って悪かったな」





 ガタッ




 グイッ…


 席を立って去ろうする先輩を

 私は条件反射で掴み



 引き止めてしまった



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