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雪の華~Memories~【彼氏いない歴31年の私】

第5章 LessonⅤ キャッツ・アイにて~孤独なピアノ~

 今はただ、彼の側にいたい、いられれば良いというのがいちばんの本音に近かった。
 なので、聡から〝今度の月曜、デートしないか〟と誘われたときは、年甲斐もなく飛び上がりたいほど嬉しかった。
 生まれてこのかた三十一年間、輝はずっと一人でクリスマスを過ごしてきた。むろん、両親と自宅で暮らしているのだから、厳密な意味で一人ではない。長い間には、会社の同期が集まってクリスマスパーティ(要するに合コンだ)開き、その集まりに参加したこともある。
 だが、いつも特定の人と過ごすクリスマスではなかった。それが三十一歳になって初めて彼氏ができて、その彼とクリスマスイブを過ごすことができるのだ。これが歓ばしい記念日でなくて何だろう。

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